プロフィール
上海勝意餐飲有限会社(中国現法)、THAI KATSUYAMAFOOD,CO,LTD(タイ現法)、株式会社Q-KATSU(日本現法)
1969年8月 諫早市生まれ
1988年3月 諫早農業高校卒業
1988年7月 北京対外経済大学へ留学
1991年 貿易会社「STAS」の代表として上海に赴任
1994年 上海で居酒屋「勝」をオープン。その後、2号店、3号店もオープン。
その後、福建省(アモイ市、福州市)にもフランチャイズ店をオープン。
2012年 タイ、ミャンマーに居酒屋「勝」をオープン。
現在、中国、日本、タイ、ミャンマーにて飲食店12店舗を経営。
趣味:ドラム
Q:中国に留学されたきっかけを教えて下さい?
A:高校時代に地元の諫早でバンドマンとして活躍し、音楽の道も志しましたが、高校卒業時に会社経営者である父から「中国に留学するか、家を出て行くかどちらかを選べ」と言われ、半ば強制的に北京へ留学することを決めました。当時は厳しい父に反発する気持ちもありましたが、今ではとても感謝しています。
1988年に留学した北京では、まだ一部配給制が残っているなど日本との環境の違いに戸惑うことが多かったです。その後、日本に帰ってからも、中国語の勉強や中国人の日本での生活の援助等の交流は続けました。
Q:中国で仕事をされるきっかけは?
A:1991年に父が経営する貿易会社「STAS」の代表として上海に赴任し、父が経営するロープ会社の製品の輸出入等を行いました。
しかし、次第に上海で飲食店を開きたいという思いが大きくなり、1993年に退社しました。その後、初めは知人の飲食店の立ち上げに関わってノウハウを学び、翌年、上海市の花園飯店近くに居酒屋「勝」をオープンしました。オープン後、ちゃんぽん、皿うどんが看板メニューとなり、店は多くのお客様で賑わいました。また、島原そうめん、五島うどん等も人気があり、長崎の食文化の豊かさには本当に助けられました。
その後、他店舗のオープンや移転などを経て、現在は上海市に3店舗の居酒屋、たこやき屋を1店舗経営しています。たこ焼きは「長崎たこ焼き」という名前で売っていて、日本のお客様からはびっくりされます。
Q:福建省でもフランチャイズ店をオープンされているそうですが?
A:知人の紹介で飲食店を経営したいという福建省出身の30代の青年に出会い、彼の熱意にうたれてアモイ市にフランチャイズ店をオープンしました。麺や焼酎等の材料は上海から送っています。現在はアモイ市に2店舗、福州市に1店舗オープンしています。
Q:タイ、ミャンマーにも出店された経緯は?
A:ここ数年、上海では家賃?従業員の賃金?物価等の上昇によりコストが上がり、飲食店のビジネス環境としてはだんだん難しい状況になっています。上海よりも日本の方が物価?家賃が安いと感じることもよくあります。また、近年の円安や日中関係の影響等により、中国在住の日本人駐在員が減っていることも、マイナス要因の一つです。
そのような中、3年前に上海の居酒屋に来られたタイ在住の日本人企業経営者からタイ?バンコクへの出店の話があり、すぐ翌週に現地視察しました。先方も自分の行動力には驚いていたようです。出店の話をくださった方が不動産業者ということもあり店舗は予め決まっていたので、私はバイク1台を借りて、さっそく仕入先などを探し回りました。物流面で難しい面もありましたが、2年前には出店し現在では順調にいっています。バンコクは一昔前の中国と同じような活気にあふれていて、ビジネスチャンスが多くあると感じます。
ミャンマーでは材料が安定的に入らないので、自ら畑で野菜を作って材料の一部を調達しています。ミャンマーでは近年、日本企業の進出が進んでおり、お客様は日本人ばかりです。ミャンマーでも上海とほぼ同じ値段で提供していますが、多くのお客様に喜んでいただいています。
これから、上海の飲食店は経営コストが更に上昇していきますので、東南アジアや中国の地方都市など、比較的コストが安く、日本企業が多く進出している地域への進出?移転を図るところが多くなるのではないかと思っています。
Q: 外国人のスタッフの育成?管理で気をつけられている事は?
A:中国人のスタッフは笑顔で接客するよう指導しても、小さい頃からの習慣もあってか、なかなかうまく笑顔で接客ができません。また、失敗しても自分から謝ることはあまりありません。中国人スタッフを教育するときは、何故それがダメなのかという理由を例え話を交えながら、根気よく教えていくことが必要です。私はいつも手鏡を持ち歩いていて、スタッフが接客中に笑顔を出せていないと、「今、こんな顔をしとるばい、もっと笑いんしゃい」と言って鏡を見せて笑顔を出すよう言っています。
タイ人、ミャンマー人のスタッフは特に指導しなくても自然な笑顔が出せて、自分の失敗は正直に謝るという点が中国人のスタッフとは違います。スタッフの育成という面では、タイ、ミャンマーの方がやりやすいと感じています。
Q:社会貢献活動もされていると聞いていますが?
A:趣味のドラムで繋がったミュージシャン等との縁もあり、日中の学生を埼玉のキャンプ場に集め3泊4日のボランティア音楽教室をここ数年毎年開催しており、飲食物の提供、調理などを行っています。
留学時代の北京、起業した上海等で、多くの中国人の友人達に助けられたからこそ、今の自分があると思っており、中国の若者達にできる限りのお返しをしたいと考えています。
また、飲食店を経営する上でちゃんぽん、皿うどんをはじめ長崎の料理、また長崎の取引先、上海在住の長崎県人の方にはとても助けられました。そのお返しではありませんが、知人のお子さんなどの長崎の若者を上海にホームステイさせて、上海での生活を体験させたりもしています。また、上海の店にも長崎県出身のスタッフが数名働いています。
私は若いうちに海外、特に日本よりも貧しい地域の現状を見ることはとても大切だと思っています。若い人には留学や仕事、旅行でも良いので、どんどん海外へ出て欲しいと思います。ただし、危ない場所に近寄らないこととうまい話しに乗らないことが大切です。
?Q:上海のおすすめスポットを教えて下さい。
A:虹松路にある「天下一籠」という店の小籠包は安くて絶品です。近くにあるステーキ屋さんもおすすめです。世界で上海にしかないリニアモーターカーも、是非一度体験されるとよいと思います。
?Q: 最後に中国人の観光客におすすめしたい長崎のスポット、食べ物等を教えて下さい。
A: 観光地ではグラバー園、稲佐山の夜景などの有名観光地もよいですが、地元諫早の轟の滝や眼鏡橋のある諫早公園などもお勧めです。大都会の上海に住む中国人が旅行する際は、都会ではなく、大自然で癒されることを求めていると思います。以前、スタッフを長崎旅行に招待したときは、魚、お米のおいしさに加え、島原等の水の綺麗さに驚いていました。
おすすめの店は諫早市の「ドラゴン食堂」で、ハンバーグランチ、ちゃんぽん、カツ丼がおすすめです。
?Q: これから中国に進出を考えている企業等に対するアドバイスをお願いします。
A: 一番重要なのは事前調査の際に、甘い話を鵜呑みにせず、自分の足で現地を回り、現地で長く経営している同業者の話などを多く聞くことだと思います。飲食店であれば、調理が上手だからといって成功する訳ではなく、現地に適したノウハウが必要だと思います。
また、日本での経営感覚を持って中国で経営しても失敗してしまいます。経営者自らが中国語を少しでも学び、中国の習慣?文化等を理解するよう努めれば、中国人のスタッフも信頼してくれる部分が大きくなると思います。長く中国で飲食店を経営してきて、仕事のストレスがたまって精神的に追い詰められる日本人を何人も見てきました。ストレスに潰されないためには、我慢しないこと、焦らない事が肝要だと思います。