【Q】:当社は中国のA省と中国のB省にそれぞれ現地法人(工場)を持っています。今般、A省の余剰人員を20名程度B省の工場に約半年から1年間、派遣(出向)させたいと思っています。
給与については、A省現地法人の方が高いので、B省側にB省ワーカーと同じ給与を支給してもらい、A省側で差額分を支給することを考えていますが、このような形で出向させる際、会社として留意すべき点があれば教えてください。
【A】:今回のケースではB省工場へ派遣される労働者は、B工場より給料を支給されるということですが、A省工場との労働契約はそのままで、B工場へ派遣されることを予定されているという前提で下記のとおり留意点をいくつか回答させていただきます。
①A工場に労働契約を残したままB工場で勤務を行い、賃金を支給される前提である場合、税務上の問題として、A工場に労働契約を残しままということであれば、労働契約のない従業員への賃金支給は税務上、損金として算入できなくなるリスクがありますので、B工場とも労働契約を締結する必要があります(二重労働契約の可否についてA及びB工場の定款での規程をご確認ください。)
②B工場とA工場の2か所で賃金が支給されるため、個人所得税申告をいずれかの一方で合算申告することになります。但し、管轄税務機関が異なるため、合算申告するにあたっては、双方の管轄税務機関へ合算申告する、特に源泉徴収しないほうの税務機関へは事前確認することをお勧めします。
根拠法令:
《個人所得税法》
第8条 個人所得税は、所得者を納税義務者とし、所得を支払う単位又は個人を源泉徴収義務者とする。個人所得が国務院所定の金額を超える場合、2か所以上において賃金?給与所得を取得し、又は源泉徴収義務者がない場合及び国務院所定のその他の事由のある場合には、納税義務者は、国の規定に従い納税申告をしなければならない。源泉徴収義務者は、国の規定に従い全員?全額源泉徴収申告をしなければならない。
《個人所得税法実施条例》
第36条 納税義務者に次の各号に掲げる事由の1つがある場合には、規定に従い主管税務機関において納税申告手続をしなければならない。
(略)
(2) 中国国内の2か所以上から賃金又は給与所得を取得するとき。
(略)
納税義務者が納税申告手続をする場所その他関係事項の管理弁法は、国務院の税務主管部門がこれを制定する。
③社会保険の標準報酬月額の問題についてA工場での労働契約は継続し、社会保険もA工場で継続加入されることになる場合、A工場ので給与支給額がB工場との差額のみになった場合、社会保険の標準報酬月額が前年度(1-12月)の平均給与で確定されるため、出向期間中の給与が減少し、社会保険の標準報酬月額が下がり、従業員にとって不利益になります。そのため、B工場支給分の合算のうえ、標準報酬月額を申告する必要がありますので、この点については、A工場人事担当者と事前に確認しておく必要があります。
なお、上記問題を解決するためにA工場が従業員を派遣してその対価をB工場から直接取得し、A工場からB工場勤務分もまとめて給与を支給するようなスキームとした場合、A工場は労務派遣業を行っていることになります。政府関係部門の認可を経て会社の経営範囲に労務派遣業が明記される必要があります。認可を経ずに派遣すれば、違法経営として処罰を受けることになりますのでこの点にもご留意ください。
税理士法人キャスト
税理士 永野弘子
以上、JCCNETより
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