上海福豚餐飲有限公司オーナー 田中誠次(たなかせいじ)氏

田中誠次 氏 田中誠次 氏

プロフィール

1996年 西海学園高等学校卒(佐世保市)

1998年 福岡県博多の屋台で修業(7年間)

2005年 上海市郊外の七宝にて「博多豚骨拉面」開業

2007年 本店を上海市内の新漁東路に移転

~現在、上海2店舗、無錫1店舗の計3店舗を展開中。

Q.中国(上海)で起業したきっかけは?

A.同じ屋台にいた中国人の留学生と話をしていて、生の豚骨から炊いたとんこつスープは、その当時中国であまり無いと知った事と中国に商売をされていたお客様から中国で日式のラーメン店を始めるのも面白いとのアドバイスをもらった事がきっかけです。

 それから佐世保で親の後を継いでラーメン店を経営していた兄と話していて、たまたま兄も中国で商売を始めてみたいと考えており、2人の考えが偶然一致したことから、本格的に出店に向けての準備を開始しました。

 まず兄が中国に行き、僕が屋台で一緒に仕事をしていた中国人留学生に現地でのパートナーになってもらって出店候補地を探したりだとか、中国(上海)のラーメン店の状況を調査して、2005年にやっと上海郊外の観光地である七宝で1店舗をオープンしました。オープン当初は、多くのお客様に豚骨ラーメンを食べてもらいたいという思いと中国で8という数字が縁起が良いということで、ラーメン1杯8元で提供していました。

 日本のように簡単に食材が手に入らないため、最初は食材探しにずいぶん苦労しました。

 最初は赤字続きでしたが、この七宝店での経験がなければここまでやって来れなかったと思います。

Q.起業する前に中国に行った経験はありましたか?

A.ありません。中国語もほとんど話せませんでしたが、上海への出店が決定してからは、一緒に屋台で仕事していた中国人から少しづつですが、中国語を教わっていました。

 オープンした当初は意外と暇だったので仕事の合間を利用して中国語の勉強をしていました。

Q.この店の看板(おススメ)メニューは何ですか?

A.個人的にお客様に食べて欲しいのは、やっぱりこの店の原点である博多豚骨ラーメンですね。あとは店の運営も考えると単価の高い炙りチャーシューラーメンもおススメしたい一品です。(笑)

Q.店舗づくりのコンセプトはありますか?

A.店舗づくりのコンセプトと言うのとは、ちょっと違うかもしれませんが、博多の屋台で修業中に店のオーナーから良いお店は「安くて?早くて?うまい」ものを出すことが大原則だと教わっていたので、お店のレイアウトも自ずと「早さ」=「作業効率が高まる」ような店舗づくりを目指しています。

 元々中国人のパートナーが内装業をやっていたので、設計や内装もほぼ自前でやっていました。現在はデザイナーの方に店舗デザインは依頼しています。2店舗目をオープンした当初は反日デモの発生直後だったこともあり、あんまり日本の雰囲気を出しすぎないように配慮しました。

Q.こちらのお店は日本人からも中国人からも人気のあるお店ですが、日本人と中国人のお客様の比率はどのようですか?

A.移転して今の場所に来た当初は日本人と中国人のお客様の割合は8:2くらいでしたが、今は逆転して2:8になってます。これには理由があって、最初は日本人が職場の中国人をお店に連れてきてくれて、その中国人がお店を気に入ってくれて自分の家族を連れてきてくれた結果こうなりました。ここでもし高い値段でラーメンを出していたら中国人のお客さんは増えなかったんじゃないかと思います。

Q.メニュー開発はどのようにされていますか?

A.看板メニューのラーメンに関しては、中国(上海)人好みに味を合わせています。メニュー開発はほとんど僕がやっていますが、こちらで商売して10年の経験がありますから、上海人の好みはだいたい把握しています。

 分かりやすい例でいうと中国(上海)人にとって麺は日本人にとってのごはんと同じ感覚なので、日本人がごはんとおかずを交互に食べるように中国(上海)人も麺を食べながらおかずを食べます。もしごはんが濃い味だったら、味が被っておかずが美味しく感じないですよね。だから中国人も麺は薄味を好みます。

 食べ方に違いがあって、ほとんどの日本人はスープを一口飲んだ後、麺だけ全部食べて最後にスープを飲むのが主流です。一方、中国人は麺を食べるのとスープを飲むのを交互にするのが特徴です。そうすると、日本人の場合は麺自体に味が絡みやすい細麺がマッチするのですが、中国人の場合は味が濃くならないように中太麺がマッチします。

 やはりラーメンに関してだけでなく中国人の食文化というと大げさかもしれませんが、中国人(上海人)の味の嗜好をしっかり把握することが重要です。

 「味は習慣に勝てない」という言葉がありますが、習慣的に中国人が慣れ親しんでいる味に新しい味は最終的には勝てません。ただ僕がみんなに食べてもらいたいのは、やっぱり日式の豚骨ラーメンなので、なるべく日式を守りつつも中国人の好む味にアレンジすることで、その味を習慣化できるように目指して行きたいです。

① 起業して現在に至るまで一番苦労したことは何ですか?

 ある意味いまが一番苦労している、というか悩んでいます。今3店舗なので、管理や店舗オペレーションもなんとか回せるのですが、もっともっと店舗を増やして行くためには、個人営業の飲食店のやり方では限界だと感じています。更に店舗を拡大していくために個人営業からの脱却としっかりとした組織体制の強化が大事と考えています。

 簡単ではないですが、どうやれば近道なのか、今は色々な人の意見を聞いたりして情報収集してます。

② お店のスタッフは気配りがしっかりできてると感じます。昔は中国人スタッフのサービス精神を教えるのは難しいと言われていましたが今はどうですか?

 はっきりいって日本流のサービスを100%できるように教えるというのは難しいと思います。うちの場合は従業員の教育について最低限の事しか教えません。マニュアルがあってもその通りには動いてくれませんので。ただどうする事が「ちゃんとやる」という事かは実際にはみんなちゃんと分かっているので、あとは他の従業員を見習うように指導しています。教えるより慣れて覚えさせるという感じですね。

 その他には従業員のサービスも含めて店を良くするために2年前から毎週1回、厨房?ホールに分かれて各店舗ごとに会議をやっています。内容はお客様のクレーム内容の改善とお互いの部門が悪い点を指摘し合って、お店の改善につながるようにしています。今後は「お客様に満足してもらうために!」をコンセプトに建設的な会議ができるように目指しています。

③今後の目標を教えて下さい。

 当面の目標は中国で30店舗を展開する事です!

④中国でビジネスしたいと思っている人に一言!

 日本でも同じですが、中途半端な気持ちならやらない方がいいと思います。

 よく上海で開業したいという人が話を聞きに来られますが、意外とみんな簡単に考えているので、そんなに甘い世界ではないと思って取組まないと失敗します。

⑤上海のおススメスポットは?

 「田子坊」と「七宝」が好きです。「田子坊」は単純に見てて面白いし、地元の佐世保の路地裏を彷彿とさせる雰囲気があります。「七宝」は水郷の街で観光スポットであり、やはり自分の商売の原点なので思い入れがあります。

⑥長崎県のおススメスポットは?

 長崎と全く関係ないのですが、自分が中国に10年住んでいて、たまに日本に戻った時はコンビニによく行きます。コンビニには新しい商品が常に溢れているし、今の日本がわかるというか、コンビニが今の日本の縮図のような印象を受けます。

 だから中国の方にも日本に旅行で行ったら、コンビニに行って欲しいです。(笑)

⑦最後に長崎の皆さんにメッセージをお願いします。

 僕は長崎の佐世保が大好きです!言いたいのは、ただそれだけです!(笑)

 あとは皆さん、特に若い人達には、夢を持って何かに取り組んでもらいたいです。やりたいことをやってもらいたいし、やり続けることでその先に継続することの難しさ、おもしろさが分かってきますから。

以上


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